New Theory 小型焙煎機による焙煎
 以下内容は、科学的分析をして数値を出したわけではありません。
 “この味にするには”と言う仮説を立て実験的な焙煎を行い、出来上がったコーヒーを客
観的に感覚でとらえ、次の仮説・実験を繰り返して組み上げたモノです。
 焙煎技術の裏付けにこの作業を行っていますが、必ずしも科学的な裏付けではあ
りません。
どちらかと言えば“豆の気持ちになって感じた。”と言う方が近いかもしれません。
以下、ニュークロップを使ったハーモニーの焙煎理論(富士珈琲機械直火式3kg釜)

よりよい焙煎を行うには

 のグラフから、各成分ごとに化学反応を起こす温度・時間が
異なり味が変化してゆく様子が分かります。
 これは水と油の沸点が違ったり、塩と砂糖の融点が違うと言うこと同様に、異なる
物質ではそれぞれに化学変化を起こす条件が違う為に起こります。
 この異なるそれぞれの化学反応やハゼという化学的現象を、豆の表層部から内部
までムラなく、いかに焙煎時間内に納めるか。
と言うことが、良い焙煎における最大の要因だと思います。

二種類の焼きムラ

1, 焙煎機の中に入れた豆全体を見たときに、焙煎しようと思った焼き加減と違うモノ。
2,
豆一粒の中で、[表層部と内部]や[部分的]に焼き加減と違うモノ。
1番目の焼きムラは良い焙煎を行うにはある程度出てしまうのはしょうが
ないモノと認識して、焙煎後のハンドピックで除去しています。
 逆にこの焼きムラを無くすためにゆっくり焼いてしまうと、上記の化学反
応・現象が収まりきれなくなってしまいます。
 2番目を特にハーモニーで重要視していす。
 よく言われている事で、“芯まで焼く”がそれに相当します。
うまく芯まで火を通す焙煎のやり方にはじめ弱火で煎り、中の水分を飛
ばし強火にして煎りあげ、目的の煎り加減で煎り止めして急速冷却する。
特により引き締まった中南米産の豆ほど最初の低温期を長くとり水分を
飛ばしてから、本煎り(強火)すると言うことが通説でした。

しかし、実際にこのような焙煎をしても思ったような成果は得られませんでした。

水分の蒸発

A,グラフより水分の蒸発はハゼの後、急速に増えます。
 ハゼが起こる前はあまり水分は蒸発しません。組織の中にある水分は、ハゼが起こ
り細胞壁が崩壊することによって豆の外に出やすくなります。
ゆで卵を例を挙げると、殻がしっかりした状態では中身(卵黄・卵白)は殻の形のまま中
で凝固してゆきます。
火が強すぎて殻が割れた卵は、卵白が流れ出して外で凝固したモノが殻に付着してい
ます。
初めから殻が割れた卵は、通常のゆで卵の形にはなりません。
 外側に内部のモノを閉じこめようとするモノ(卵は殻・コーヒー豆の場合は細胞壁)が
壊れて(壊されて)内部にあるモノが外部に出やすくなるのです。

ハゼとは

熱による内部の膨張と細胞壁の軟化により、一斉に細胞壁が崩壊し、音をぱちぱち立
てながら膨張する事。

ハーモニーでは

 火を止めた後、ダンパーを全開にしてシティーロースト→1.5minute フルシティー
→1minute フレンチ→0.5minute焙煎機の中で水分を飛ばします。
 焙煎機から出す時点で煎り止めになる様に火を止めるタイミングを謀ります。
よって、良く引き締まったグァテマラ アンティグァでも初めの弱火にしている時間を変え
ていません。

排気能力とカロリー

 まず始めに、排気=ガス籠もり・煙の臭いと言う式を思い立ちますが、その前に1つ
の事例を挙げてみましょう。
   お風呂で暖まるときに、
 流れを起こすと流れがなかった時より熱く感じるはずです。
熱いお湯ならなおさら熱く感じ、長く湯船に浸かる事が出来ずに出てしまうはずです。
逆にぬるすぎるお湯では寒く感じるはずです。結果的に体の芯から暖まることが出来
ないはずです。
 “流れのない適温(人によって異なる)のお湯にある程度の時間(人によって異なる)
浸かる”が体の芯まで暖める方法ではないでしょうか。
   話を焙煎に戻すと、
 煙・ガスの排出だけを考えて排気量を増やすと豆が芯まで暖まらない(芯残り)の状
態になります。
 排気量を増やさず要らない物だけ釜の外に出す方法は、排気口(焙煎機の排気口
からダクトの出口まで)の経を大きくすることです。
(排気ファンも大口径で回転速度を落とした方がよい)
B、グラフは、一定の排気効率した(抜く量を同じにする)排気口径と排気速度をのバラ
ンスです。
しかし、ダクトの口径を大きくする事は比較的簡単に出来ても、焙煎機の排気口は用意
に大きくすることは出来ません。
そこで豆から排出される煙・ガスを抑える必要性が出ます。
もちろん豆の中に閉じこめたのでは意味がありません。焙煎する量を抑えて排出量を減
らします。
 そしてダンパーの開度を出来る限り締め気味にします。
目安はこれ以上閉めると、排気口以外の場所から煙が漏れる。と言ったところまでで
す。
全く排気をしない焙煎をすると、煙臭くなったり、ガス籠もりの味になりますが、保全に
よって排気能力が変わるので注意が必要です。

ハーモニーでは

 上記方法を採ってもデメリットも生じます。
さきほど記述した2つの焼けムラのうち1,の豆全体を見たときのムラです。
ハーモニーでは焙煎後のハンドピックでこれを取り除き解消しています。
各焙煎機によって排気口の行程(形状・長さ)(保全の程度)によって違いが出ます
が、メーカーの提示してあるMAX焙煎量よりかなり少ない量になります。

ダクトの保全

 年間で二回、気温の変化の少ない時期に焙煎機内とダクトとそれぞれ別(一ヶ月ぐ
らいおく)の日に掃除を行っております。

一般的な排気能力の上げ方

a,

ダクト口径を大きくする。

b,

ダクトを垂直方向に延ばす。

c,

ダンパーの開きを大きくする。
しかし、b,c,の方法では流速が早まります。

フルシティーローストとフレンチロースト

 現在、焼き色を7段階に種分けするのが、ローストの段階を表す一般的な方法で
す。
しかし、焼き色だけで種分けしてしまうと(焼き加減を調節してしまうと)、味が思うよう
にコントロールできません。
フルシティー以下のローストとフレンチ以上のローストとでは、1ハゼからの熱のかけ
方を変えて焙煎しますが、焼き色で言えばフルシティーとフレンチは、ほぼ同色に焼
きます。
違いは豆の個性臭とロースト臭のバランスの違いによって、ハーモニーでは段階分
けをしています。
はみ出し  炭火と遠赤外線
参考文献フライパターン・マニュアル 著者 増沢信二 山と渓谷社

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炭火の特徴
 炭焼き焙煎の魅力は、炭火が遠赤外線を出している効力が大きい事です。
そもそも赤外線とは可視光線より波長の長い電磁波の一種で、赤外線の波長の中
でもより波長の長いのが遠赤外線です。
更に波長が長い電磁波がマイクロ波です。
ご存じの様に電子レンジで使われている電磁波です。
このマイクロ波は物質の分子を振動させて発熱させます。
ガスなどの熱源は表面の分子から徐々に振動させて加熱して行きますが、マイクロ
波の場合は内部まで同調させる波動でムラなく熱を加えることが出来ます。
このマイクロ波に近い電磁波が遠赤外線です。やはり内部までムラなく熱を加えま
す。
炭焼き焙煎のデメリットは火力調節の難しさです。
概ねガスと併用して焙煎されます。
ガス火のようなクイックな調節が利きません。
コストが掛かる事も一つです。
 
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