Present
  “ミリング 劣化させない”  
   “香りなどの揮発性の成分蒸発を、出来る限り止めておくには、抽出直前にミリン  
  グする事が望ましいです。”  
  “挽く” 手挽きミルを使って、自ら粉にすることは楽しい。(自我関与)  
  この2項目、言われれば納得してしまう事でしょう。  
  上質の豆が重要で、抽出はあまり味に関与せず、少しでも味を落とさない様にする  
  には、挽きたての豆を使った方が美味しくなる。そう言われているから、尚更です  
  ね。  
  HARMONYの見地は、全く違います。  
  一生懸命、美味しくと思っているその行為が、逆にコーヒーを不味くしています。  
  Shopに設置している4台のミル。(ドリップ・サイフォン用2台・エスプレッソ用2台)合  
  計4台を定期的にオーバーホールしています。  
  何故、それが必要なのでしょうか。  
  たとえば、あまり切れない包丁で肉を切ったらどうなりますか。  
  よく切れる包丁と比べ、必要以上に前後に押したり引いたりします。  
  また、力も余計に入れていることでしょう。  
  これが、整備された業務用のミルと家庭用のミルとの違いです。  
  粒を同じ大きさにするのに、刃が切れないと何回も豆に接触します。  
  これは、表面積を増やします。  
  理想を言えば、粉1粒当たり、6カット(立方体)の切断が最も効率的に全体を粒に  
  出来るはずです。  
しかし、効率が悪ければ(刃が当たる回数が増えれば)どんどん面を増やしてほ
  ぼ、球形になります。  
  それら粉になったモノを、もう一度、元の豆に戻したら、球と球を並べた隙間が出来  
  ている筈です。  
  そこにあった部分は、微粉と呼ばれる微細な粉です。  
  1粒の粉の体積が同等ならどちらの表面積が大きくなるでしょうか。
 
また、粒子が小さく沢山になった場合との面積比は、どうなるでしょうか。
更に、刃が接触した成分は引き延ばしてしまいます。
  回数が多い=刃の移動距離が長い。と置き換えられるので、これもまた、揮発性  
  成分を蒸発させる結果を生みます。  
   切れない刃はもう一つ欠点があります。  
  摩擦熱が多くなります。  
  切断以外に余った運動エネルギーは熱エネルギーへ変換される=摩擦熱の発生  
  熱の発生により、成分の蒸発・変化を促進させます。  
  以上の他、家庭用のミルは業務用と比べ製造精度や剛性・堅牢性が劣る事も、テ  
  イストに大きな影響を与えます。  
  これは、刃と刃のクリアランスが一定に保たれない為、粒度が揃いません。  
  また摩耗も早く、新調した筈のミルが知らず知らずの内に摩耗して、ボロボロになっ  
  たもので挽いている羽目になりかねません。  
  特に、剛性がないモノを使い、堅い豆を挽くと1回でボロボロになってしまうモノもあ  
  ります。  
   これ以外の問題は、メンテナンス。  
  ミルは1回でも使うと、刃の隙間に粉が残ります。  
  その粉が、使っているうちに劣化し、新しく挽いた粉にその香りや味を移します。  
  2ヶ月に1回程度の分解掃除行っている方は良いのですが、通常、気にせず何年  
  もそのままの状態で使っています。  
  いきなり、味が低下すればまだ劣化に気付く可能性はありますが、徐々に劣化する  
  のでほとんど気の付かないまま、気分だけが“挽きたて”“新鮮”に満足してしまっ  
  ています。  
  自身が劣化を導く挽き方をして無駄な時間を費やすより、もっと抽出への配慮を行  
  った方が、遙かに有意義なテーストを得られる事を認識してください。